【業種別景況と企業動向】教育

少子化ゆえに進学実績以外の魅力が重要

 少子化が進み、道内でも学校の統廃合が進む一方で、私立学校への注目度が増している。「生きる力」を養うことを目標とする新学習指導要領を踏まえて、各校では特色作りに取り組み、生徒獲得競争は激化している。大事な我が子を預けるにふさわしい学校はどこか――。

 年々深刻化する少子化問題。北海道でもその傾向は顕著で、2021年度の道内の高校在学者数は12万人を切った。
 少子化の影響により学校の統廃合が進む一方、道内4校目の私立小学校として田中学園立命館慶祥小学校が開校するなど、公立志向の強かった道内の教育界に徐々に変化が起きている。
「保護者面談をしていると、教育にお金をかけたいという声をよく聞きます。一人っ子なので特に大切に育てたいと考える保護者も増えているようです」(中学入試担当の塾講師)
 かつての中高一貫校の入試市場は、有名大学の合格者数に大きく影響されていた。しかし、中高期を大学進学までの通過点と考えるのではなく、我が子がどのような6年間を過ごすのかを真剣に考える家庭が増えている。
 高い進学実績を上げていることはいわば〝当たり前〟。現在では実績に加えて以下の3点が重視されるという。
 ①経験値
 前出の塾講師は「資金はあるけれど時間が取れない、親がさせたいけれど家庭ではなかなか難しい、そんな経験をさせられる学校の人気が上がっています」と分析する。
 文部科学省では学習指導要領をおよそ10年ぶりに改訂し、20年度には小学校、21年度に中学校、22年度からは高校で随時実施している。
 新学習指導要領では、
「知識および技能」
「思考力、判断力、表現力等」
「学びに向かう力、人間性等」
の「三つの柱」をキーワードに「生きる力」を養うことを目標としている。
 この学習指導要領を踏まえて、各校ではカリキュラムの再編成が行われている。海外研修旅行や特色ある校外学習、珍しい、もしくは優秀な成績を持つクラブ活動、「総合的な探究の時間」などでオリジナルのカリキュラムを持つ学校は特に注目を集めやすい。
 ②ICTなどの学校設備
 コロナ禍による一斉休校時には、多くの私学で公立校に先行した対応が取られ、タブレット型端末等を使ったオンライン授業が実施された。
 公立校でもICT機器の配布が一通り完了した現在は、オンライン学習記録を用いて生徒一人ひとりに面談を実施するなど、ICTをどう活用するかという〝次のステップ〟が注目されている。
 ③全人教育
 前述のように、現在の入試市場では進学実績偏重主義を脱している。新学習指導要領の三つの柱にもあるように、豊かな人間性を養う〝全人教育〟に各校で力を入れている。
「キャリア教育で経済産業省が定める社会人基礎力を養ったり、地域社会や世界とのつながりを意識させるなど、東京の私学は早くから全人教育に力を入れていました。その傾向が道内でも広がっています」(前出の塾講師)
 22年3月の道立高等学校入試は学力検査方法が変更され、40年ぶりに各教科100点、計500点満点となった。学力点変更の一方で、内申点は変わらず315点満点。ある進学塾の高校入試担当者は、次のように語る。
「中学校の成績算出方法が絶対評価に変更されてから、内申点のインフレがあちこちの学校で起こりました。内申点は不平等な指標だとする見方が広まっており、入試当日の学力点を重視する傾向が各地で広まっています。他の都県には、内申点は中3時の評定のみとしているところもあります。そんな中、北海道は内申点を変更しませんでした。学校の勉強もこつこつ頑張る〝おりこうさん〟な生徒を大事にする北海道らしいですね」
 内申点インフレにより、公立トップ校の受験にあたっては満点に近い成績が求められるようになった。トップ校受験を支える結果になっているのが、私立校の最上位コースだという。
「各校で最上位コースが充実し、進学実績が伸びました。これにより第一志望の公立校でチャレンジがしやすくなりました」(前出の塾関係者)
 高校卒業後の進路に目を向けると、道内では専門学校への進学率が高い傾向にある。
21年3月の道内高校卒業者は前年度から約800人減少したが、専門学校進学者は約550人増加。同進学率は23・9%で、全国の17・3%を大きく上回る。
「専門学校の魅力は、社会で役立つ資格に対応していること、社会ニーズの高い人材を育てていること、そして群を抜く就職率の高さにあります。求職希望者の就職率は95%を数え、そのうち道内で就職した割合は85%となっています。企業へのアンケート調査でも、専門学校卒業生は『仕事に対する意欲がある』『基礎的な能力が高い』と好評です」(北海道私立専修学校各種学校連合会担当者)
 北海道私立専修学校各種学校連合会では、中高生の職業や勤労への理解を深めることを重視。中学校や高校でのキャリア教育の一助として、「次世代人材職業体験推進事業」「進路探究学習オリエンテーリング事業」「キャリア教育プログラム」などを実施し、知名度・理解度アップにつながるよう取り組む。

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