【業種別景況と企業動向】建設不動産

※国税庁公表資料より抜粋 ※旭川東は「旭川市神楽2条6丁目」、室蘭は「登別市登別温泉町」、苫小牧は「苫小牧市表町5丁目」から最高路線価が変更された

公共事業は堅調も、国際情勢の影響は必至

 北海道開発予算を始めとする公共事業はコロナ禍でも堅調に推移。淘汰の進む建設業者の中には企業買収や人、モノ、ITへの投資で勝ち組になるところも出てきた。ただしロシアによるウクライナ侵攻、急激な円安などにより、建設資材を始めさまざまなモノが高騰し続けており、負の影響は否めない。

 北海道総合開発計画のもと、道路建設や治山治水、農業基盤整備などを行う北海道開発予算は、旧民主党政権で大きく減額。その後、自民党の政権奪還を経た2013年度から、ほぼ一貫して増額または横ばいが続いてきた。
 コロナ禍に見舞われた19年度末から今年度にかけては、行動制限をともなう感染拡大防止対策によって民間企業の事業が停滞する中、経済活動の循環、雇用維持の観点からも例年通りに事業を継続してきた。
 各種の公共事業を請け負う国や道の許可を受けた道内建設業者はこの20年で4分の3以下となり、2万業者を割り込んだ。一方で21年度に約2兆8000億円と堅調な建設投資額を背景に、積極的に事業承継・M&Aを推進する意欲的な業者も増加。傘下に収めた事業者を通じ、営業エリアを拡大するといった事例も見られるようになってきた。
 慢性化して久しい人手不足に対しては、賃金引き上げ、労働環境改善、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進といった「当たり前」のトレンドをコロナ禍が加速させた側面があり、これらの対策に、より積極的な業者が〝勝ち組〟となっている。
 他方、景気の先行指標として知られる新設住宅着工戸数は21年度、分譲マンションなどを含む総数で前年比5%強と回復。16年の3万7515戸を頂点に、札幌市内でマンション用地の確保が困難となって供給戸数は減り、販売価格は旺盛な需要からうなぎ登りとなっていたが、コロナショックで一服。昨年はコロナ禍で居住空間が見直されたことから、一戸建ての着工戸数が同16%強も増加した。
 ただ、世界レベルでのワーク・ライフスタイルの変化が木材不足「ウッドショック」を引き起こしている現状は変わっていない上、ロシアによるウクライナ侵攻、急激な円安によって資材価格のみならずさまざまなモノの価格が上昇し続けている。住宅需要に対して負の影響を与えることは必至だ。
 最後に、国税庁が全国各地の税務署単位で発表している道内30税務署管内の「最高路線価」を掲載した。
 道内最高額は札幌中税務署管轄で、札幌市中央区北5条西3丁目の「道道18号札幌停車場線通り」、いわゆる札幌駅前通りで1平方㍍あたりの価格は616万円。
 路線価の上昇率がもっとも高かったのは、札幌市白石区・厚別区、江別市を管轄する札幌東税務署管轄の同厚別区厚別中央2条5丁目「新札幌駅前通り」。サンピアザなど旧来の商業施設群に加えて再開発が進むエリアで、13.5%のプラスとなった。
 国税庁によれば、道内の標準宅地の平均上昇率は7年連続で増加し、全国平均の0.5%を上回るプラス4.0%。札幌市内・近郊の5税務署管轄区域が平均を押し上げた一方、11の税務署管轄区域でマイナスとなった。もちろん、札幌への一極集中が原因だ。
 なお、国土交通省が公表する「公示地価」の最高額は、同中央区北4条西4丁目1番7外の札幌駅前で、1平方㍍あたり557万円。公示地価の最高額は30年以上、同中央区南1条西4丁目1番1外の先ごろ閉館した4丁目プラザ前だったが、近年は札幌駅前と激しく競っている。

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