北海道科学大学/川上 敬 学長

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(かわかみ・たかし)1963年北海道生まれ。北海道大学工学部精密工学科卒業。北海道大学大学院工学研究科博士後期課程修了。88年より民間企業にて研究開発に従事。北海道女子短期大学講師を経て、98年北海道工業大学(現北海道科学大学)工学部に着任。2018年より 副学長。22年より現職。

全学的にデータサイエンスを強化、先進的な高大連携も

――4月から新たに学長に就任しましたが、その意気込みを。

川上 : 世界のあらゆる領域で劇的な変化が起きています。予測不可能な時代と言われる一方で、テクノロジーの進歩は顕著です。DXやAIがここ数年で急速に浸透しました。これから学生が出て行く社会は昔とは違うでしょう。この社会で今後何十年と生き抜いていくためには大学で身に付けて欲しい能力も変わってきます。社会で強く生き抜く力を身に付けるための教育改革を進めていきます。

――その一つがデータサイエンスですね。

川上 : 本学には保健医療学部や薬学部をはじめ、職業に直結する学部があります。もちろん資格を取得することは重要ですが、職業人になるための教育を受けただけでは今後は生き抜いていけないと考えています。
 学生には「ビヨンド」の意識を持って欲しいと伝えています。資格を取得し、職を得たその向こう側に何が待ち受けているのか、どうやって世界を切り開いていくのかを考えて欲しい。そのために有効なツールの一つがデータサイエンスだと考えています。
 データサイエンスのニーズは今後も増していきます。そのために全学統一のデータサイエンスプログラムをつくり、昨年度から入学した全ての学生が学んでいます。

――データに強く、分析できる力を持つ学生を育てるわけですね。

川上 : 「+Professional」を本学ではスローガンにしてきました。
ヒューマニティ、コミュニケーション能力、問題発見・課題解決能力、マネジメント能力といった基盤能力を身に付け、その上に専門性、プロフェッショナルな部分を積み上げていくという考えです。
 統計的な物の見方や数理的に物事を理解すると言う観点からデータサイエンスも基盤能力の一つと捉えています。英語を勉強するのと同じような立ち位置です。社会に出てからはさまざまな問題を解決していかなければなりません。その際にデータ分析に基づいたエビデンスを持って説明できるような人材を育てていきたい。

――教育への情熱は志願者数に表れていますね。

川上 : おかげさまで4年連続で北海道内の私学では志願者数1位になっています。

――就職もいいですね。

川上 : 就職率は99・9%です。また、新たな試みとして卒業後3年間、ゼミ担当教員が卒業生の状況をヒアリングする「+3年ケアプロジェクト」をスタートしました。すでに自主的に卒業生の相談に乗ったり、場合によっては再就職先を斡旋している教員はいます。こうした教員と卒業生の密接なつながりを全学的に展開していきます。
 入社から3年以内に離職する若者が多いと言われていますが、本学の卒業生の3年離職率は全国平均より非常に低い。卒業後、不安があっても大学が3年間ケアをすれば、その後は自走できるはずですし、ご家族も安心でしょう。

――研究が盛んな大学ですね。

川上 : 私の専門はAIですが、保健医療学部や薬学部の教員に課題を聞くと、実はAIで解決できるケースが少なくありません。こうした課題を学部の垣根を越えた共同研究で解決してきました。医薬工連携です。こうしたプロジェクトが数多くあり、芽吹いているのは本学の大きな特長でしょう。
 学生も他学部の教員や学生と卒業研究に取り組むケースが増えています。今後はより早い年次の教育に組み込んでいきたいと考えています。

――来春には系列校の北海道科学大学高校が移転してきます。

川上 : 同じキャンパスに高校・大学があり、その上に大学院があるという構造になります。足し算ではなく、掛け算にして相乗効果を生み出したい。まずは学びの中身を接続します。その一つが大学と高校で単位を相互交換するコンカレントプログラムです。
 本学への進学を予定している高校3年生の後期に、大学1年後期の授業を受けてもらいます。大学1年生と同じレベルで評価し、高校と大学の単位を認定します。すでに進学先が決まっている生徒に、高校最後の半年を有効活用して、より早いうちに高度な勉強、学びを掴んでもらうのが狙いです。

――大学1年生の後期は何を学ぶのでしょうか。

川上 : ギャップタームを利用して、留学やボランティア活動など人間性を高めるための時間に使ってもらいます。やりたいことが見つかっていない学生には、複数のプログラムを提示する予定です。

――改修中の図書館も来春に完成しますね。

川上 : 名称は学生からの公募で決定します。堅苦しい図書館ではなく、オープンで自主的に学べるフィールドにしたい。大学生だけではなく、高校生、地域のみなさんにも開放します。

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大学と同じキャンパスに移転する北海道科学大学高校(写真はイメージ)
北海道科学大学
札幌市手稲区前田7条15丁目4番1号
TEL:011・681・2161
https://www.hus.ac.jp/

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